省エネの家「パッシブハウス」とは?
冷暖房をそれほど使わなくても、夏も冬も快適な家がつくれるとしたら? ドイツで生まれた「パッシブハウス」は省エネで快適な家づくりを目指すメソッドです。
「パッシブハウス」とは、ドイツで始まったサステナブルな家づくりのメソッド。高機能ガラスや断熱材を使用した高気密の建物により、人工冷暖房に頼ることなく屋内環境を快適に保つ。私たちの住環境を根本から見直して生まれた方法であり、どんな場所に住んでいても、環境に優しく、燃費を大幅に減らせる方法だ。この記事では、パッシブハウスの家づくりの基本となる、設計・施工のための「五原則」を紹介する。
パッシブハウスが始まったのは1980年代後半のこと。ドイツの物理学者、ヴォルフガング・ファイスト博士と建設の専門家であるボー・アダムソン教授が最初に開発を始めた。高断熱高気密により屋内の温度を快適に維持する、というコンセプトで、アイスランドで中世から続く草屋根住宅など、伝統建築からヒントを得ている。
「住宅に物理学を応用しているのです」と話すのは、シドニーで現在オーストラリア初のパッシブハウス集合住宅を設計している建築家のスティール・アソシエイツのオリヴァー・スティールさんだ。「オーストラリアは、サステナブルで省エネルギーの設計に対する意識が遅れていると思います。自然光をとりいれるための大きな窓や、通風に対する意識は高いのですが、物理学的にみて本当に効率的なのか、という視点がかけているのです。パッシブハウスは、厳密な科学の力で、こうしたことに取り組みます」。
「住宅に物理学を応用しているのです」と話すのは、シドニーで現在オーストラリア初のパッシブハウス集合住宅を設計している建築家のスティール・アソシエイツのオリヴァー・スティールさんだ。「オーストラリアは、サステナブルで省エネルギーの設計に対する意識が遅れていると思います。自然光をとりいれるための大きな窓や、通風に対する意識は高いのですが、物理学的にみて本当に効率的なのか、という視点がかけているのです。パッシブハウスは、厳密な科学の力で、こうしたことに取り組みます」。
公式に世界初とされるパッシブハウスは、1990年にドイツで竣工した。1年目の暖房用エネルギーを計測すると、当時の標準的住宅のわずか8%に抑えられていた。その後も計測を続けたところ、数字は5.5%まで下がった。
パッシブハウスの考え方は急速に広がり、主にヨーロッパにおいて、その後27年で50,000軒のパッシブハウス認定住宅が竣工した。ドイツにあるパッシブハウス研究所において技術はさらに発展。また、同研究所は、世界各国におけるパッシブハウスの性能基準を監督している。
パッシブハウスの考え方は急速に広がり、主にヨーロッパにおいて、その後27年で50,000軒のパッシブハウス認定住宅が竣工した。ドイツにあるパッシブハウス研究所において技術はさらに発展。また、同研究所は、世界各国におけるパッシブハウスの性能基準を監督している。
パッシブハウス認定住宅は、設計および施工において独自の基準を守って建てられる。研究所が求めるエネルギー消費基準を竣工後も守り続ける性能が求められる。
写真は、2012年にエコ・デザイン・コンサルタンツが英国バッキンガムシャー、ミルトンキーンズに建設した、同社初のパッシブハウス。
写真は、2012年にエコ・デザイン・コンサルタンツが英国バッキンガムシャー、ミルトンキーンズに建設した、同社初のパッシブハウス。
2. 高機能な窓とドア
「窓から熱が逃げるのを防ぐには、窓の機能も高くする必要があります」とバーンスタイン=ハスマンさんは言う。パッシブハウス研究所は、窓枠の断熱と、複層ガラスあるいは低放射率ガラスの使用をパッシブハウスの条件として規定している。
低放射率ガラスあるいはLow-Eガラスは、熱を反射する非常に薄いコーティングが施されている。これは、暑い夏の日差しを遮るには有効だが、冬に取り入れられる日光の熱は減ることになる。
Low-E複層ガラスとは? 最新の窓ガラスが持つ、断熱や遮熱性能のことを知ろう!
「窓から熱が逃げるのを防ぐには、窓の機能も高くする必要があります」とバーンスタイン=ハスマンさんは言う。パッシブハウス研究所は、窓枠の断熱と、複層ガラスあるいは低放射率ガラスの使用をパッシブハウスの条件として規定している。
低放射率ガラスあるいはLow-Eガラスは、熱を反射する非常に薄いコーティングが施されている。これは、暑い夏の日差しを遮るには有効だが、冬に取り入れられる日光の熱は減ることになる。
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4. 高気密
「第四原則は、高気密の家づくりです。気密性の高い建物なら、隙間風が吹き込んだり、あたたかい空気が逃げることがありません。接合部分はきっちりと気密化し、建物を包む「外皮」の隙間をなくします」とバーンスタイン=ハスマンさん。
「オーストラリアの住宅においては、高気密の実現がいちばん重要な課題です」とスティールさんも言う。「冬に隙間風が吹く家では、室内のあちこちで暖房をつけることになり、温室ガス排出につながります。気密化すれば、簡単に改善できることなのに」。
高気密、高断熱の家なら、屋内の快適な温度を維持できるので、冷暖房のために必要なエネルギーを大きく削減することができる。
「第四原則は、高気密の家づくりです。気密性の高い建物なら、隙間風が吹き込んだり、あたたかい空気が逃げることがありません。接合部分はきっちりと気密化し、建物を包む「外皮」の隙間をなくします」とバーンスタイン=ハスマンさん。
「オーストラリアの住宅においては、高気密の実現がいちばん重要な課題です」とスティールさんも言う。「冬に隙間風が吹く家では、室内のあちこちで暖房をつけることになり、温室ガス排出につながります。気密化すれば、簡単に改善できることなのに」。
高気密、高断熱の家なら、屋内の快適な温度を維持できるので、冷暖房のために必要なエネルギーを大きく削減することができる。
5. 熱交換換気
隙間風はもちろん、空気が漏れることのない高気密の家では、熱交換換気(HRV)システムにより、室内外の通風・換気を行う。したがって、熱交換換気システムの導入が、パッシブハウスの家づくりの第五原則となる。
汚れた空気を排出し、フィルターを通した一定温度の新鮮な空気を継続的に取り入れるHRVは、パッシブハウスに欠かせない重要な機能だ。室内の空気の淀みや空気の質を改善し、寒い季節には結露を防ぐ役割も果たす。
HRVには熱交換器が備わっており、排出する空気とほぼおなじ温度で新鮮な空気を取り入れる。「こうすることで、建物内の熱エネルギーの85〜90%が維持されます」とバーンスタイン=ハスマンさん。「屋内では、つねに22〜23度の設定気温を維持することが基本です」。
2つの賞を受賞した、サステナブルなパッシブリノベーションの家《KIP》
Houzzツアー:パッシブデザインで実現した、自然と寄り添う快適な暮らし
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隙間風はもちろん、空気が漏れることのない高気密の家では、熱交換換気(HRV)システムにより、室内外の通風・換気を行う。したがって、熱交換換気システムの導入が、パッシブハウスの家づくりの第五原則となる。
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HRVには熱交換器が備わっており、排出する空気とほぼおなじ温度で新鮮な空気を取り入れる。「こうすることで、建物内の熱エネルギーの85〜90%が維持されます」とバーンスタイン=ハスマンさん。「屋内では、つねに22〜23度の設定気温を維持することが基本です」。
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真冬でも、四六時中暖房を使うことなく、暖かく快適に過ごせる家を想像できるだろうか? 熱帯のようにうだる真夏でも、涼しく心地よく過ごせる家はどうだろう? 静かで、隙間風がなく、カビもホコリも立たず、冷暖房費も極めて低く、二酸化炭素排出量も減らせる家があるとしたら?
そんな家を可能にしてくれるのが、パッシブハウスの家づくりだ。オーストラリアでは、近年、パッシブハウスにとりくむ設計者がますます増えている。イノベーションにあふれ、しかも実現可能な設計・建設手法であるパッシブデザインこそ、未来のサステナブル住宅の理想を示している、と話す設計者も少なくない。